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2025.09.01

【AI駆動開発 合同勉強会#1】開催レポート

 2025年7月29日、グリーエックス株式会社は、「AI駆動開発 合同勉強会#1 – 実践者が語る、AI×開発のリアル -」を開催いたしました。開発現場でのAI活用が注目される中、本勉強会は、第一線でAI開発を推進する企業が集い、知見を共有する「企業を横断した学びの場」を創出することを目的に開催されました。本記事では、当日の様子をダイジェストでお届けします。

■ イベント概要
開催日時: 2025年7月29日(火) 18:30~21:00
会場: グリーホールディングス株式会社オフィス 3F
参加人数: 35名
主催: グリーエックス株式会社

■セッション1:性能試験での生成AIの活用事例
登壇者: 手塚 優(Airitech株式会社
最初のセッションでは、Airitech株式会社 手塚様より「性能試験での生成AIの活用事例」というテーマでお話しいただきました。

▼セッション内容のサマリー
・課題提起
 従来の性能試験開発では、1テストケースあたり3~5日という長大な時間を要し、専門知識が必要なため担当者の負担が大きく、限られた人員でしか対応できないという課題がありました。
・解決策の提示
 AIを活用したアプローチにより、手作業からAI自動化への転換を図りました。 具体的には、JMeterからPythonベースでAIが生成しやすいLocustへ移行し、URLから直接テストシナリオを作成するのではなく、間にクローリングの工程を追加することで、AIが必要な情報を確実に取得し、適切なテストシナリオを生成できるようにしました。
 また、技術的基盤の整備として、ドキュメントのMarkdown化は重要な改善でした。仕様書の標準化により統一フォーマットで可読性が向上し、Git連携によるバージョン管理で変更履歴を追跡できるようになりました。そして何より、Markdown形式によってAI処理効率が大幅に向上しました。
・事例紹介
 性能試験開発にAIを導入した結果、作業時間を3~5日から1~2時間へと約95%削減することに成功しました。 これにより、専門知識がないメンバーでも性能試験開発に参加できるようになり、手作業によるミスを削減し、品質の安定化も実現しました。
 他にも、2つの技術的ブレイクスルーにより、実用的なAI活用が可能になりました。 具体的には、Playwright MCPの導入により、クローリングの時間を2日から1時間に改善。シーケンス処理の実装により、APIの自動リクエスト問題を、順次実行による正確な再現を行うことで、実際のユーザー挙動をLocustで再現しました。
・まとめと提言
 段階的なアプローチによって課題を解決し、効率性と品質を両立させることに成功しました。 今後は、ドキュメントの拡充、より高度なAIの活用、そしてテスト作成パターンの蓄積を進めることで、誰でも簡単に性能試験開発に参加可能な環境を構築していく予定です。

■セッション2:AI開発ツールの持続可能な導入と運用
登壇者: 安立 健人(グリーエックス株式会社
続いて、グリーエックス株式会社の安立より、自身の経験を交えながら「AI開発ツールの持続可能な導入と運用」というテーマでお話しいただきました。

▼セッション内容のサマリー
・課題提起
 AI開発ツールを組織に導入する際には、多くの企業が共通の課題に直面します。具体的には、AIが生成するコードの意図ズレやミスによる品質問題、既存の開発スタイルや文化との衝突、APIキーなどの機密情報がAIの学習データに含まれてしまうセキュリティリスク、そして大規模モデルの利用による想定以上のコストの上振れといった問題が挙げられます。また、AIがプロジェクト固有の設計規約を理解できず、保守性を損なうコードを提案してしまうケースも存在します。 こういった問題により、AIを活用したのに、却って生産性が低下してしまうというリスクが存在します。
・解決策の提示
 特定のツールを導入するのではなく、チームの状況に合わせて持続可能な形でAI駆動開発を導入するための考え方が重要です。具体的には、既存の開発スタイルを尊重し、独立して動作し、開発スタイルに影響を及ぼさないツールや、.gitignoreにあるファイルは読み取らない、セキュリティ意識の高いツール等を選ぶ必要があります。また、無駄なトークン消費を抑える差分更新が可能なツールや、コストを常時可視化できる仕組みを導入し、リポジトリ全体の設計や意図を理解する能力に長けたAI・ツールを活用することが解決策としてあげられます。
・事例紹介
 様々な課題を検討した結果、最終的には自らツールを作り、市販のツールに頼るのではなく、自社のチーム構成やスキルレベル、許容コストに合わせて必要な要素を取捨選択し、最適なツールを自作するというアプローチで課題解決に成功しました。
・まとめと提言
 完璧なAIツールは存在しない可能性があり、「チームにあったAIツールの導入」と「チームにあった使い方」をすることが最も重要です。開発の意思決定はあくまで品源にあるため、人間が無理にAIに合わせるのではなく、あくまで「人間主導」でツールの選定や導入方法を決定していくマインドセットが、持続可能な運用に不可欠です。

■セッション3:AI駆動開発の現在地 〜半年間の実践から見えた、生産性を飛躍させる手法と陥りがちな罠〜
登壇者: 井形 圭介(株式会社Logicraft
続いて、株式会社Logicraftの井形様より「AI駆動開発の現在地 〜半年間の実践から見えた、生産性を飛躍させる手法と陥りがちな罠〜」というテーマでお話しいただきました。

▼セッション内容のサマリー
・課題提起
 多くの開発プロジェクトでは、言葉や資料だけでは細かなニュアンスが伝わらず、顧客との間に認識の齟齬が生まれることで、多くの手戻りやコミュニケーションコストが発生するという課題があります。特にアジャイル開発では、要件が固まっていない初期段階で抽象的な要望や曖昧なレビューが頻発しがちです。
・解決策の提示
 課題解決のための具体的なアプローチとして、AIを活用した「短期高速ウォーターフォール」開発を推進しています。これは、顧客からのヒアリング内容を基に、AIツールで即座に要件定義書と画面プロトタイプを生成し、顧客と視覚的に合意形成を行う手法です。固まった仕様を基に、短期高速ウォーターフォール開発を行うことで、開発サイクルを1〜2週間という短期間で回し、従来のウォーターフォールの弱点であった変化への弱さを克服します。
・事例紹介
 Logicraftでは、様々なツールや技術の試行錯誤をした上で、2025年時点での最適解は、要件定義フェーズにてGeminiやClaude、プロトタイピングではVercel v0を活用。開発フェーズでは、プロジェクト全体の文脈を理解するWindsurfや、初期構築に強力なClaude Codeを導入し、メンバーが機能開発に集中できる分業体制を確立する形であると考えています。技術スタックもAIとの相性を考慮し、フロントエンドはNext.js × Tailwind CSS、バックエンドはFastAPI × AWS ECSを選定。 さらに、ヒューマンエラーが生じやすいインフラ構築も、TerraformとAIを組み合わせることで自動化し、開発プロセスを劇的に高速化・安定化・コストの可視化をすることに成功しています。
・まとめと提言
 AI時代の最適な開発プロセスは「短期高速ウォーターフォール」であると考えます。AIの性能を最大限に引き出す鍵は、曖昧さを排除した「ドキュメントによる厳密な指示」であり、これによりAIの推測による品質のばらつきを防ぎます。今後、AIツールと技術スタックは、プロジェクトの目的やフェーズに応じて最適化し続けることが生産性向上の鍵であり、AIによる自動化と人間の判断のバランスを見極めることが重要です。

■セッション4:AI駆動開発の高速化と品質の均一化を目指して
登壇者: 徳永 勝里(株式会社SakuraRin
最後のセッションでは、株式会社SakuraRinの徳永様より「AI駆動開発の高速化と品質の均一化を目指して」というテーマでお話しいただきました。

▼セッション内容のサマリー
・課題提起
 AIを開発に導入する際、多くの開発者が直面する課題として、AIを全く使わない旧来の開発(レガシーコーディング)ではスピードが遅く、逆にAIに丸投げする「雰囲気」だけの開発(バイブコーディング)では品質が担保できないというジレンマがあります。 また、AIを活用しつつも、コードの意図・ロジックをすべて理解しながら進める開発(リアルコーディング)では、品質の高いコードが出せる一方で、情報量が多く、開発に時間がかかるという欠点が存在します。 また、AIとのコミュニケーションがうまくいかず、期待通りの成果物が出てこなかったり、十分な情報を与えられないためにAIがコードを誤解したりする問題も頻繁に発生します。結果として、修正困難なバグの発生や、保守性の低いコードの量産につながるリスクが存在します。
・解決策の提示
 これらの課題を解決する手法として、「リアル寄りのバイブコーディング(セミリアルコーディング)」というハイブリッドな開発スタイルがあげられます。これは、AIのスピード感を活かしつつ、開発者はコードの意図やロジックをしっかり理解し、主導権を握るというアプローチです。具体的な手法として、以下のようなルールが定められています。
・・AIとの対話法:AIを「相談相手の上司」と「コードを書く部下」という二重人格として捉え、目的に応じて対話方法を使い分ける。
・・情報提供:AIに指示を出す際は、関連ファイルを絞り込み、機能単位のReadMeを用意するなど、人間が情報を厳選し、音声入力も活用して細かく正確にコンテキストを伝える。
・・設計と構造化:「まず作ってみてから設計する」というアジャイル的な考え方を基本とし 、コードは機能ごとに「ブロック単位」で管理することで、大規模開発のような保守性を担保する。
・・品質管理:開発者はAIが生成したコードを「ほどほどに」理解し 、デザイン実装では画像で指示を出す一方、アニメーションなどの感覚的な調整は人間が行う。
・セミリアルコーディングも万能ではないため、プロジェクトの難易度、機密性、保守性、開発期間を総合的に判断し、どこまでリアルコーディングに寄せるかを戦略的に決定することが重要です。
・事例紹介
 Sakura RinはAI支援開発を実践するために、社内コーディングルールを策定しました。「SVG等のビジュアル素材と設計をセットで進める」、「初期段階でフォルダ構成を明確にする」、「過剰なフォルダ分割は避ける」「AIに任せる場合でもフォルダ構成は人間が主導する」「技術選定は分野別の情報をAIに読み込ませて選択」といった、現場で生まれた具体的なルールが多数存在し、AIとの協業における課題を乗り越え、品質とスピードの両立を目指しています。
・まとめと提言
 AI時代の開発で成功する鍵は、AIを単なる自動化ツールとして使うのではなく、人間が戦略的な思考を担い、AIを優秀なアシスタントとして使いこなす「リアルコーディング」の考え方にあります。今後はAIエージェントが進化し、開発サイクルの最適化や問題予測を自動で行うようになると予測される一方で 、ビジネス価値の判断、戦略的な設計、セキュリティの最終責任、そして創造的な問題解決といった領域は、今後も人間が担うべき重要な価値として残り続けると想定されます。

■ 会場の様子とネットワーキング
 セッション中は多くの参加者が熱心にメモを取り、質疑応答では活発な意見交換が行われました。イベント終了後には、参加者同士での交流を深めるネットワーキングの時間を設け、登壇者と参加者が直接話せる貴重な機会となりました。



■ 当日の資料
 本セミナーで使用した資料をご覧になりたい方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
お問い合わせこちら:グリーエックス株式会社CONTACT

■ まとめ
 ご参加いただいた皆様、そして素晴らしいお話をしてくださった登壇者の皆様に、心より感謝申し上げます。 本セミナーが、皆様のビジネスや学習のヒントとなれば幸いです。次回のイベントでまたお会いできることを楽しみにしております。

■本件に関するお問い合わせ
グリーエックス広報担当:宮川(みやがわ)
TEL:03-5770-9547
E-mail : pr@gree-x.com

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